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日 付 2000/12/31  朝・夕刊 朝刊  その他  5  1版 
見出し 社説/幕閉じる20世紀/「戦争の世紀」に決別/21世紀こそ平和な世界に 
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社説/幕閉じる20世紀/「戦争の世紀」に決別/21世紀こそ平和な世界に


 さよなら二十世紀。
 「戦争の世紀」と称された二十世紀もきょうで幕を閉じ、あすから新世紀の幕が開ける。
 「戦争の世紀」にピリオドを打ち、二十一世紀こそ「平和の世紀」を確立できるのか。いや、ぜひとも確立しなければならない。それが人類共通の願いであるはずだ。
 二十世紀は沖縄にとっても苦難の世紀であった。「貧困」「差別」「戦争」「異民族支配」「復興」「自立」―などのキーワードが示すように、数々の苦難にほんろうされながらも沖縄の平和な明るい未来を模索し続けてきた。
 特に、一般住民を巻き込み地上戦が展開された沖縄戦では軍民合わせて二十万人余りの貴い命が奪われ、その後二十七年間も続いた米軍統治の中では基本的人権さえも無視されるような出来事が続いた。
 しかし、そのような中でもわれわれはめげることなく、「平和」、「基本的人権」の確立を目指してきた。でも、それもまだ道半ばに過ぎない。

沖縄戦を教訓に

 沖縄の二十世紀を振り返る時、最も大きな出来事は、やはり第二次世界大戦・「沖縄戦」である。「鉄の暴風」が吹き荒れ、多くの人々が戦場に散り、沖縄は焦土と化した。
 そして、サンフランシスコ講和条約で沖縄は日本から切り離され米軍統治による異民族支配が始まる。銃剣とブルドーザーによる土地の収奪、米軍基地の建設。さらに相次ぐ事件・事故。「米兵による由美子ちゃん事件」に象徴されるように軍事裁判で死刑判決を受けても本国に送還されるという、基本的人権の無視。
 このような圧政の中、抵抗を続け、「日本復帰」を勝ち取った。民主主義を掲げる米国も、゛占領地・沖縄゛では人権無視の施策を続けることを知った。
 しかも、復帰後も巨大な米軍基地は居座り続け、日米安保体制のもと、基地の重圧は続き、基地問題の解決は二十一世紀に持ち越された。
 普天間基地の代替基地建設問題もいよいよ正念場を迎える。しかし、「十五年の使用期限」を付けようとも県内移設が抜本的解決につながらないことはだれの目にも明らかである。まず、海兵隊の削減・撤去からはじめ、基地のない平和な島・沖縄を新世紀の早い次期に築かなければならない。
 悲惨な戦争、異民族支配、復帰後も居座る基地。その中で培われた沖縄の財産は「命どぅ宝」、「平和を希求する心」である。
 今年の沖縄サミットでも、沖縄側から世界に発信したのは「平和」の二文字であった。
 世界に目を転じると、東西の冷戦構造は崩壊したものの、「宗教」「民族」などの対立による戦争は絶えない。われわれは一国主義に陥ることなく、沖縄の経験を生かし、二十一世紀は「人」「愛」そして「地球主義」の立場で戦争のない平和な世紀になることを願う。
 また、沖縄は「ソテツ地獄」「海外移民」にみられるように、二十世紀は「貧困」との闘いの歴史でもあった。 海外移民は一八九九年のハワイ移住に始まり、一九○一年以降、南米、フィリピンなどアジアに広がった。それは「貧困」からの脱却を求めたものであり、別の見方をすれば「棄民政策」でもあった。
 アジアへ移民した人々は敗戦とともに引き揚げるが、米国や南米では苦難の歴史を乗り越え、異国の地でたくましく成長し、いまや、「世界のウチナーンチュ」の一大ネットワークを築くまでになった。「貧困」からの脱却と雄飛が、沖縄の大きな財産となり、二十一世紀に引き継がれる。

県民の英知結集

 文化的にみると、沖縄は「差別」との闘いでもあった。博覧館の見世物小屋で「琉球人」が展示された「人類館」事件。沖縄県人の「忠君愛国思想の乏しさ」をポジティブに取り上げた河上肇゛舌禍゛事件。そして「ぐうたらな」琉球人を描いた広津和郎「さまよへる琉球人」など。
 本土への「同化」と「異化」のはざまでほんろうされた。
 ここには「異文化」を認めぬ、戦前の政府の施策があった。それは侵略戦争のもと、支配したアジアの地域でも同様な施策が展開された。
 しかし、沖縄の人々は、そのはざまで揺れ動きながらも「独自の文化」を守り、さらに発展させてきた。今年、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」が世界遺産に登録され、県民に大きな自信と誇りを与えた。
 互いの文化を認め合うことは、いまや世界の常識となっているが、百年という歴史の中でみると、それは近年のことであり、しかもいまだ「異文化」ゆえの争いが続いている地域があることを忘れてはなるまい。
 県民は「しなやかさ」と「したたかさ」で苦難の歴史を克服し、戦後、着実に復興を遂げてきた。若者のスポーツ界や芸能界などでの活躍もめざましいものがある。
 二十世紀の歴史を教訓に「負の遺産」は一掃し、新しい沖縄の未来を県民の英知で築こう。




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