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日 付 2001/02/17  朝・夕刊 朝刊  その他  5  1版 
見出し グローバル化する沖縄 移民ネットワーク/1/自立向け構造変える仕組みを/市場原理の導入不可避/大嶺 隆 
本 文
グローバル化する沖縄 移民ネットワーク/1/自立向け構造変える仕組みを/市場原理の導入不可避/大嶺 隆


 1、はじめに
 今年の十一月に沖縄県で開催される第三回世界のウチナーンチュ大会は、沖縄がもつ国際的な移民ネットワークの規模と力を内外に示す大きな意味をもっている。前回の一九九五年の大会から六年を経て開催されるこの大会の意義は、その後の沖縄県を取り巻く情勢の変化を受けて、きわめて新しい国際的な要素を踏まえて展開されることになる。
 その第一点は、第二回大会の後にハワイを中心とした県系人によるビジネスネットワークWUB(Worldwide Uchinanchu Business Association)が生まれたことである。
 第二点は、沖縄県の地域振興の中で、県が策定した国際都市形成構想を経て、昨年八月、政府によって最終報告された沖縄経済振興二十一世紀プラン(二十一世紀プラン)に引き継がれた、グローバルスタンダードの確保による地域振興の流れである。
 これらの要素は、我が国における地方の国際化の流れと異なり、東南・東アジアに隣接する沖縄の地政学的位置や、米軍基地を抱える固有の要素を踏まえた、独特な国際化である。
 本稿では、まず、沖縄の産業振興におけるネットワークの意義を明らかにし、さらに、移民ネットワークが持つ今後の沖縄振興における有効性を検証する。
 その上で、人的なネットワークを構築する具体例として、三人のウチナーンチュを紹介し、今後の沖縄におけるグローバルなネットワークの方向性を提示するもので、この移民ネットワークによる交流の拡大と、沖縄の経済・文化にはたす意味を考えてみたい。
 移民の定義について、ここでは海外進出先に長期に滞在し、すでにその国の市民として日常生活を続けている日本国籍者も対象としている。また、ウチナーンチュという言葉の定義は、ここでは県内、県外、海外を含め、沖縄に地縁・血縁を持つ人々を総称する。

 2、沖縄振興におけるネットワークの意味
 沖縄経済が、自立型経済に向けて政策展開をするためには、基地(軍関係受取)や財政依存(財政移転)の割合の高い経済構造を自ら変えてゆく仕組みが求められる。
 「沖縄振興中長期展望についての検討調査」(平成十年三月、総合研究開発機構)には、沖縄経済が発展メカニズムを内生化し、自立的、持続的な発展軌道に乗るには、発展のビジョンや戦略が地元で練り上げられ、発信され、その自主的選択が尊重されること、と書かれている。
 しかしながら、現状の県内経済は、一人当たりの県内総生産が日本国内平均の約七割で、労働生産性の低い地方経済のレベルにとどまっている。これには、東京のような競争的市場とは異なり、財政移転等を通じて社会資本整備など公共投資による政策的に与えられた経済行為によるパイの分け合いや、地縁・血縁的な横並びの心理要素の強い風土が、生産性の向上のインセンティブとなる競争の導入を排除していることが考えられる。
 一方、自立型経済を、県内はもとより、広く国際的にも開かれたものとして捉え、沖縄経済を二十一世紀の地球時代に飛翔させる条件で考えるのなら、市場競争の原理は不可避である。特に、二十一世紀プランの政策の基本理念の(2)の「我が国経済社会に貢献する地域としての沖縄」で述べている「グローバルスタンダード(国際標準)」を確保できる地域の形成の視点は、これまでの県内経済の質的転換を根底的に求めて行くことになるだろう。
 ところで、沖縄県の産業分野の中で、国際競争力のある分野はすべてにわたっているわけではない。比較優位にある産業分野の振興は、やはり沖縄の特性と結びついている。二十一世紀プランではそれを(1)加工交易型産業、(2)観光・リゾート産業、(3)国際的ネットワークを目指す情報通信産業、(4)農林水産業―の四つの分野にまとめてあるが、東京や大阪、福岡等の人口と資本の集積する国際都市と異なり、規模の限界性において国際標準を達成し、生産性を上げるためには、集中的な人材と資本のシフトが必要とされるだろう。
(沖縄協会流動研究センター主任研究員)


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