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日 付 2001/07/01  朝・夕刊 朝刊  政治・行政  3  1版 
見出し 日曜評論/宝くじとIT教育/斎藤陽子(USセラミック・サプライ・インク社副社長) 
本 文
日曜評論/宝くじとIT教育/斎藤陽子(USセラミック・サプライ・インク社副社長)


 一枚の宝くじ券の価格は一ドル、そのたった一枚の券が、アメリカの州単位の宝くじ当選額としては、米国史上最高金額一億四千百万ドル(日本円で約百七十億円)を、一人の人が射止めた。この気の遠くなるような出来事は、六月二十四日の全米トップニュースとして駆け巡った。
 十五年前、カリフォルニア住民の反対や賛成の紆余曲折(うよきょくせつ)を経て、州民投票で可決されたこの宝くじ、毎週水曜と土曜に行われるが、当たり券が数カ月も出ずに持ち越しとなり、今回はこの記録的な金額となった。このように何週も当たり券が出ず、高額になってくると、職場や友人の間では、かならず宝くじ談義が始まり、まるで自分が明日は億万長者にでもなるような、確信に満ちた会話が飛び交うから面白い。
 さて、この宝くじ50%を賞金に充て、16%が宝くじ運営諸雑費とするが、カリフォルニア州民の合意を得て可決された。この宝くじの目的は、売上金の34%をカリフォルニアのコンピュータ教育資金に充てようというもので、小学校から大学までの各校へ、コンピュータ機器購入資金とすることを目的とし実施される。
 クリントン米大統領が一九九二年の大統領選挙の際に、公約として掲げたのが、全米規模の高度情報通信ネットワーク。当選後九三年にゴア副大統領が「情報スーパーハイウェイ」を提唱して以来、アメリカのコンピュータ教育の分野は、目覚ましい進み方を遂げている。
 カリフォルニアの小中学校における、コンピュータ教育に関する広報誌によると、小中学校備品として、八二年には生徒百人に一台だったコンピュータが、九五年には十二人に一台となり、二〇〇一年には児童生徒が一人一台の割合の卓上コンピュータ保有率だ。そのうえ大手コンピュータ社からの寄付を受けた、ノート式コンピュータが、各教室の本棚には生徒の人数分が、ノートのようにそろえているのが、カリフォルニアの現在の状況である。
 小学校のコンピュータ・ラボ(実習室)には、三十台ほどのコンピュータが並んでおり、各クラスの時間表により割り振りされて利用するシステムになっている。毎週二回一時間ずつの指導には、担任教師、ラボ専任教師、父母のボランティアがあたっている。幼稚園児からコンピュータの授業がカリキュラムに取り入れられており、スイッチの入れ方、切り方などを学び、文字と絵を合わせるソフトなどを使用し、コンピュータを身近なひとつの「道具」として、なれ親しむようにさせている。また、高学年の五、六年生などは、あらゆるソフトを使用し、英語、社会、理科などの授業のほか、学校新聞の発行など、実践教育に役立てている。
 アメリカの教育の現場では、従来より行われている「調べ学習」という教育方法と、コンピュータの持つ特質とがうまく合致し、理想のかたちを作っているように思える。
 さて、先進国である日本の小学校、中学校を視察し、そのコンピュータ保有台数の少なさに驚く。日本はすでに韓国、台湾、シンガポール、マレーシアなどに後れを取っており、森前首相が「五年後の日本は世界のIT先進国にする」と、言明しているが、環境整備の方が随分遅れているように思えてならない。また、カリフォルニアの教員免許の取得時には、コンピュータ操作も必須条件としているが、日本の小中学校内で、コンピュータを指導できる教師の数の少ないのも気にかかる。
 大局的に視野を向けると「マルチメディア構想」の、将来の沖縄を支える人材こそは、現在の小中学生であり、コンピュータ教育の環境整備を早急に充実させ、今から精魂込めて、人材育成をすることこそ、最重要課題のように思う。



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