琉球新報 記事詳細

日 付 2001/11/04  朝・夕刊 朝刊  政治・行政  3  1版 
見出し 日曜評論/WUB世界大会を終えて/重田辰弥(WUB東京会長) 
本 文
日曜評論/WUB世界大会を終えて/重田辰弥(WUB東京会長)


 すでに本紙でも報じられたように、去る十月二十九日、内外から予想以上の参加者を得て、「第5回WUB世界大会東京2001」を無事終えることができた。私はこの会の主管を引き受けたとき、心中ひそかに、出来れば補助金等の公的支援を受けない有志のボランティア活動で、実現できないかと考える一方、場合によっては一千万円ほどの負債を背負うかもしれないと思った。
 結果は二十人を超える有志の方々が、本業のかたわら一年近く毎週土曜日にミーティングを続け、自ら会費を負担しつつ、それぞれの立場で協賛広告をお願いし、予算の大半を調達した。とはいえ私の拘(かかわ)りが有志の方々に「奉仕を要求する」という形になり、必要以上の負担を掛けたのではないかという反省もある。
 一年近い大会準備活動を通して、自分の欠点を思い知らされる等、いろいろ学習させられた。「WUBはビジネスを標榜(ひょうぼう)するのだから利益を追求していい」という考えと、「奉仕に徹する」考えが混在したことも悩ましかった。WUBのコンセプトから一概に前者を退けることも出来ないし、ビジネスチャンスを長期的スパンで見るか、短期的に見るかという区分けもある。実際には同じ人がその二つの考えの中で行き来しているケースもあり、必ずしもメンバーをこの二つに明確に区分できる訳はない。
 ただ、大会実現に最後まで尽力した人々はほとんど「利益を考えていたら、とてもやっておれない」という気分で大会が終わったいま、メンバー同士は、利益に代えられない達成感と連帯感に浸っている。
 「一人では出来ないから皆で」と思う人が何人集まっても創業はうまく行かない。一人がリスクを全面的に背負い、それに連携することによって、ビジネスは立ち上がる。連携には信頼が必要だ。
 ビジネスはお互いの信頼関係がなければ成立しない。交流とネットワークは、信頼形成のためにある。信頼感が醸成しないうちに、会員を対象とするマーケット活動が内部で行われると、交流連携を求めるメンバーは、自分たちが市場対象と見なされていると感じ、利益志向の強いメンバーは「金にならない」と見切りをつけ、さっさと去って行く。
 われわれWUBは外部の評価を意識するあまり、短兵急に創業やビジネス連携を求めるのではなく、まず会員間の信頼形成を目指すためのネットワークと交流を深めたい。外部も「まだかまだか」と、せっかちに目に見える成果や結果を求めず、長い目で見てほしい。
 世界のウチナーンチュ・ネットワーク形成の手がかりは、各地の県人会組織が有効で情報が得やすい。ただ、私たちWUBの組織形成を通し、その手法とルートの限界を感じた。
 今回、私が「第5回WUB世界大会東京2001」を主管するにあたって、パネリストをお願いするために接触したインターナショナルなビジネスで成功している沖縄二世、三世の若い人々は、県人会の組織に属さず、関心もないばかりか敬遠しているケースさえあった。
 これはなにも海外の二世に限らず、一世のビジネスパーソンや国内の県出身経営者にも見られる。情緒的な「チムグクル」だけでは商売にならないということかもしれない。こういう人たちと、どうネットワークを形成するかが今後の課題だ。



備 考  
ニュース源 その他  記事種   写真枚数 0