琉球新報 記事詳細

日 付 2001/12/02  朝・夕刊 朝刊  政治・行政  3  1版 
見出し 日曜評論/EC・webサイト「okinawa1」/重田辰弥(日本アドバンストシステム社長、WUB東京会長) 
本 文
日曜評論/EC・webサイト「okinawa1」/重田辰弥(日本アドバンストシステム社長、WUB東京会長)


 ECとは欧州共同体という意味もあるが、ここで言うのは「エレクトロニク・コマース」すなわち「電子商取引」のこと。WEBは本来「蜘蛛くもの巣」の意味だが、転じて「蜘蛛の巣状に世界に張り巡らされたコンピュータ・ネットワーク」の意。SITEとは本来、場所や敷地をいい「EC・WEBサイト」は要するに「コンピュータネット上の市場」である。
 このECビジネスには大きく分けて二種類がある。「B to C」と「B to B」の二つである。前者はBすなわちビジネス(企業・商店)からC(コンシューマ=消費者・購買者)向けの小売り商売。後者は企業間取引、たとえば産地業者がスーパーや食堂に卸す商売。もっと大掛かりなのは、自動車メーカーが部品メーカーからネット上で部品を調達する取引等である。専門家の間では「B to C」は市場が成熟していないのでもうからないが、「B to B」が商売の本命といわれているが現実には必ずしもそのようにはなっていない。この市場が十分な利益を生み出し、商売として成り立つためにはさまざまな課題がある。まず買い手であるユーザーが、パソコンをもち、その使用に慣れている必要がある。注文は電子的に瞬時に出来ても、配送は従来どおり宅配や郵送というアナログ方式によっている。代金の受け渡し決済の問題もある。
 そうした課題にもかかわらず、時間と場所を問わないこのインターネット上の市場は、島嶼(とうしょ)産地の沖縄に、より向いているのは否定できない。現実に、沖縄の特産品を売るマチヤグヮーが近くにない北陸や北海道、果ては北欧などの遠隔地に住む人が、産地沖縄からインターネットで買い物をしている。製品が映像で見え、その場で問い合わせも出来るのが電話注文やダイレクトメール等による注文と大きく違う。沖縄でも多くのECサイトが立ち上がっている。
 一年前、NTTコミュニケーションズ社のサポートによって沖縄EC・webサイト「okinawa1」(おきなわいち)がスタートした。現在四十以上の店舗が一千点以上の商品を、ネット上に陳列している。発足以来毎月確実に店舗、品種、会員、販売額が直線状に伸びている。わずか一年の内に、これだけの実績は沖縄の類似のサイトでは群を抜いているとして、先日NTTコミュニケーションズ社のシステムユーザー会で、全国百以上のECサイト中の人気サイトとして第一回の「ショップオブマンスリー」(月間最優秀)として表彰を受けた。意外なところで沖縄発が善戦している。
 目下このサイトで何が一番売れているかといえば沖縄音楽のCDである。専門家のいうところでは、地方の特産品と音楽は相関関係があるそうだ。ただ、すべてがめでたしかと言うと、多くの人が指摘するとおり、ビジネスとしては楽ではない。すべての業績指標が伸びているので、採算分岐点をクリアーするのは時間の問題だが、課題はそれまで兵糧がもつかということだ。リアルビジネスでも確かな実績を築いた元銀座「わした」店長がコンサルタント業等の個人収入で支えている。単なるビジネスを越えた沖縄文化のネット上のポータル(正面玄関)的役割を果たし得るサイトと意気に感じ、当社をはじめ有志がサポートしている。今回は多くの皆さんのご理解とご支援をいただきたく、多少「わが田に水を引く」論になった。




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