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日 付 2003/09/11  朝・夕刊 朝刊  政治・行政  2  1版 
見出し <夢をつなぐ・南米・ハワイのウチナー社会>4/新たな交流模索/スペイン系移民に親近感/アルゼンチン(上) 
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<夢をつなぐ・南米・ハワイのウチナー社会>4/新たな交流模索/スペイン系移民に親近感/アルゼンチン(上)


 「日系人とガジェゴは共通点が多い」
 在亜沖縄県人連合会は今年から、スペイン系のガリシア移民との文化、経済交流を積極的に進めようとしている。
 人口約三千七百万人のアルゼンチンで、日系人は約三万五千人と推計されるが、県系人が七割以上を占める。スペイン系は人口の30%弱を占めるが、その中でも北西部地方のガリシア自治州から移り住んだ子孫を「ガジェゴ」と称し、少数派ながら強い結束力で知られる。
 拠点となる在亜ガリシアセンターは一九〇七年設立で、現在の会員数は約二万五千人。同胞の相互扶助を目的に、総合病院や劇場、図書館などを運営している。
 中核の医療部門は、六十の診察室と八つの手術室、三百五十床の病室を備え、四百人の医師、二百二十人の看護士を含む千二百人の職員が従事している。月に二万八千件の外来と五千件の急患、年間四千例の手術を執り行う。
 稲嶺恵一知事は八月二十六日、ブエノスアイレス市内の同センターを訪問した。出迎えたロヘリオ・アロンソ会長は「日系人もガリシア移民も勤勉で誠実、犯罪に手を染める者はいない。世界に移民社会をつくっているのも共通点だ」と述べ、知事を歓迎した。
 アルゼンチンではクリーニング店を営む県系人が多いが、ガリシア人は雑貨商が多く、隣人同士になるケースが多いという。
 在亜県人連合会の新垣定二幹事は「沖縄とガリシアはそれぞれの中央とは異なる文化を持つなど、歴史的にもよく似ている。知事の訪問で、今後の交流に弾みがつく」と喜んだ。
 くしくも、双方の移民社会を象徴する作家がそれぞれ生まれている。
 「ガイジン(外人)」のタイトルで県系一世の父親の足跡をたどった又吉マキシミリアーノ(二四)さんと、ベストセラー「ママ」を書いたガリシア人のフェルナンデス・ディアスさん。「ガイジン」は昨年、中南米のスペイン語圏諸国を対象にした文学賞を受賞し、又吉さんは一躍、南米の日系社会で知られる存在となった。
 県人連合会では、交流の手始めとして、今月初旬に二人の対談を企画した。対談を前に又吉さんは「ウチナーンチュとして意識したことはないが、自分が知らなかった父親の歴史を垣間見たかった。『ママ』との共通点はたくさんあると思う」と話した。
 県系人社会の世代交代が進む中で、新たな交流の行方が注目されそうだ。
(政経部・外間聡)



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